新型コロナに対して薬剤やワクチンの開発は進んでいますが、いまだ確かな治療法がないのが現状です。そんな中、注目されているのが「回復者血漿療法」です。もともと感染症に対してあった治療方法ですが、新型コロナに対しては日本では初めての試みになります。新型コロナに対しての「回復者血漿療法」研究の日本での第一人者は、国立国際医療研究センターの忽那賢志医師です。委員会の審査が終わってこれから臨床研究に入りますが、その効果への期待は大きいですが、副作用も心配されるところです。そこで、
「回復者血漿療法」のしくみ
「回復者血漿療法」の安全性や副作用
を解説します。
10月11日(日)23:25〜『情熱大陸』
感染症医/忽那賢志
新型コロナウイルス感染から回復した患者からコロナウイルスに効く抗体を取り出す「回復者血漿療法」
新型コロナ治療の臨床研究最前線に迫る。#情熱大陸 #mbs #tbs #忽那賢志 #新型コロナ #回復者血漿 pic.twitter.com/2CyxhbE5Le— 情熱大陸 (@jounetsu) October 4, 2020
「回復者血漿療法」のしくみ
「抗体」って聞いたことがあると思います。
「抗体」はどういうものかというと
ヒトのからだに細菌やウイルスなどが入ってきたときに、
それに対抗してからだを守ろうとする働きがありますが、
そのときに作られる物質が『抗体』です。
「抗体」は細菌やウイルスが悪い働きをしないよう働くタンパク質の一種です。
新型コロナに感染すると
ヒトのからだの中では
新型コロナに対して「抗体」が作られます。
抗体はどこに作られるかというと
ヒトの血液の中に作られます。
血液には色々な成分が含まれますが、
血液の中から赤血球・白血球・血小板などを取り除いて残ったのが
「血漿(けっしょう)」と呼ばれる血液の液体成分です。
この血漿の中に「抗体」が含まれています。
新型コロナに感染して回復した人の血漿には
新型コロナに対する抗体が含まれます。
これが新型コロナに対しての
「回復者血漿」と呼ばれるものです。
新型コロナに対する「回復者血漿療法」は、
新型コロナに対する抗体を含む血漿を投与することで、
新しく新型コロナに感染した患者さんの治療に役立てる
という療法です。
回復者血漿療法は新しい療法ではなくて、
ちょうど100年前のスペイン風邪の治療としても行われてて
「有効性が示された」という報告があります。
近年では、
H5N1鳥インフルエンザ、
エボラ出血熱
SARS(重症急性呼吸器症候群)
MERS(中東呼吸器症候群)
などの感染症にも行われてきた療法で古典的な治療法の一つです。
新型コロナに対しては回復者血漿療法の効果は
まだ研究報告は少ないですが、
・中国からは「中等症の患者グループでは有効性」
が示されています。
・アメリカからは、「回復者血漿投与群で死亡率が低下した」
という報告が出ています。
・日本では国立国際医療研究センターの忽那賢志医師によって
臨床研究が進められているところです。
「回復者血漿療法」の安全性や副作用
回復者血漿中の抗体は、ヒトのからだで作られるものなので、
化学的に合成される薬剤と違って安全で副作用はあまりないように思われますが、
すでにアメリカでは「回復者血漿療法」の安全性に懸念が報じられています。
現在までアメリカでは20000例を超える新型コロナ患者に
回復者血漿療法が行われていて
副作用は従来の輸血と同じようにあったと報告されてます。
従来の輸血の副作用とは
・アレルギー反応
・肺障害(TRALI: 輸血関連急性肺障害)
・心不全など
ヒトのからだで作られる抗体を含む血漿とはいえ
他人のものなので、アレルギー反応を起こすこともありえたり、
血漿を輸血するわけなので、心臓や肺に負担がかかって
肺障害や心不全を起こすこともありえることは理解できます。
さらに心配な回復者血漿療法の副作用は
「抗体依存性感染増強」という反応です。
これは病原体に対する抗体が、
細胞へのウイルスの侵入をむしろ増加させ、
疾患を重症化させてしまう現象です。
これは一番困る副作用ですね。
新型コロナに感染して回復者血漿療法を受けたばっかりに
新型コロナウィルスの侵入をさらに増加させて
重症化してしまう!
この反応がどういう条件でおこるのかはっきりわからないと
新型コロナに対して回復者血漿療法は使えない
ということになってしまいます。
まとめ
新型コロナに対して治療方法が確立されていない中、注目されている「回復者血漿療法」について「回復者血漿療法」のしくみ・「回復者血漿療法」の安全性や副作用をまとめました。新型コロナに対する回復者血漿療法は、新型コロナに感染して回復した人の抗体を含む血漿を、新型コロナに感染した人に投与して回復させようとする療法です。効果も報告されていますが、副作用の心配、特に「抗体依存性感染増強」という、逆にウィルスの侵入を増強させてしまうという反応の心配もあり、今後の臨床研究で安全性が確立されることを期待します。
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